組合ニュース2011第39号

「組合ニュース」は、大阪大学箕面地区教職員組合と全教職員とのコミュニケーションを活発にする目的で発行するものです。
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■■□ 組合ニュース 2011年度 第39号 ■■□■■□ 2012年7月7日 ■■

(1)一寸引きの精神で 今岡良子

私たちは労働者です。
役員以外は、使用され、その代価として賃金をもらう労働者です。
このことは、いつも胸に刻んで団体交渉に参加しています。

炭坑労働者だった人が教えてくれた言葉、
「一寸引き」。

どんな大きな岩でも、コツコツと叩き、押したり、引いたりしている
うちに割れて来る。
動力を使わずに、人間の体中の力を振り絞る「一寸引き」
その人間が1人、また1人と力をあわせていく。
「一寸引き」は目的を果たすものだという。

団体交渉で私たちの前に座る背広を来た人たちは
巨大な岩です。
うんとも、すんとも動きません。
しかも、かなりいじわるな知恵を働かせます。

今回の賃金減額は、私たちに何の問題があるわけではありません。
国家公務員の給与の引き下げに準じたものです。
総長は、一年以上も前の震災被災地のイメージを持ち出して
予算要求できない、と被害者づらです。
こんな理不尽な賃金削減に対し、考えられる抵抗をしましたが、
私たち労働者の存在しない役員会の場で7月1日をもって施行を
決められました。

しかし、あきらめません。
私たちは、石炭を掘り出した人々と同じ労働者です。
「一寸引き」の精神で、大きな岩を動かしていきます。
考えられる手だてを検討し続けます。

鉱山には「一寸引き」の歌と踊りがあるそうですが、
木遣り音頭も、実は、「一寸引き」のBGMです。
人間ばん馬は、丸太をわずか2、3センチずつ押し上げて、
木遣り音頭を終える頃には最上段までくみ上げる。
それどころか、山を切り開き、田畑を開墾する農業も、
ひと鍬、ひと鍬、「一寸引き」の繰り返しです。

本来、私たち人間は「一寸引き」の精神で働き、
生きてきたのではないでしょうか?

現代社会の労働は、高度に専門化され、分業化され、
全体をつかむのが難しいほど巨大のシステムに依存しています。
それがうまくいっているのか?
安全なのか?
信じるしかないほどデカイです。

311後、私たちは、原発に変わる再生エネルギーへの転換にシフト
しつつありますが、その前に、自分の体に依存する労働と生活に
戻ること、そこからデカイ組織のありようを問いなおす力をつけ
ていくことが大事ではないかと思います。

大学の労働者である私たちも巨大な組織を信頼して働いていますが、
今回のように、私たちに何の理由もなく、賃金を削減されることが
あります。

運営費交付金の金額が決まり、削減した賃金金額が多すぎて、
おつりが出ても、それをどう返却するか、労使で話し合うつもりが
ない、というのが大阪大学です。

こんな搾取、大学がするとは思いもしませんでした。
こんな理不尽なこと、「おかしい」「いやだ」「やめろ」と肉声を
あげていかなければこれから先、この列島で地震が起こる度に繰り
返されるのかも。

今回、実に多くの方々が署名行動に参加してくださいました。
私は、これが私たちの「一寸引き」の始まりだと思います。

箕面組合にできることは「一寸引き」でしかありませんが、
あきらめずに続けて行きます。

組合員でない人は、「一寸引き」の仲間になって、
助け合っていこうではありませんか。

組合員は、執行委員になって、ほんの2、3センチ分丸太を動かす
つもりで、「一寸引き」をしていこうではありませんか。

7月26日は総会です。
一年間を振り返り、次の執行委員に仕事を引きつぎます。
箕面組合ができなかったこと、できたこと、
総会で明らかになります。
是非、参加して、意見を述べてください。
これも、一つの「一寸引き」です。


***********
(2)団交のまとめ  

6月28日9時30分~@箕面

今回の団体交渉は賃金減額率について話し合うことを目標とした
ものです。

組合から
岡本、酒井、今岡、水田、竹村、古泉
大阪大学組合書記長の北泊さんがオブザーバー参加。

大学側は
尾山理事、部長、課長、課長補佐、係長らが参加しました。


組合は、まず、大学が提示した減額率でどれだけの痛みが生じるのか、
数字で把握するために資料の開示を求めました。
6月22日pdf 添付ファイルをご覧ください。

大学は、資料を出してきました。
6月28日減額率回答pdf 添付ファイルをご覧ください。


私たちは、大阪大学の収入に占める交付金の割合36%を根拠に
大学案に36%をかけた減額率まで下げることを目標にして
交渉をするつもりでいました。

しかし、前日に、大学は、大阪大学教職員組合に対し、
交渉の後、持参した紙を読み上げて、
事実上、交渉を打ち切りを伝えました。

大阪大学教職員組合は、
まだ、箕面組合との団交が予定されているにもかかわらず、
持参した紙を読み上げたことに対し、激しく抗議するとともに、
私たちの団交にも書記長が参加してくれました。

交渉によって事項を決定する意志なく形式的に「やった」という
アリバイを作る大阪大学。
これだけで、不当労働行為です。
こんなやり方でないと賃金切り下げができないほど、
大学には理がないということです。

それでも、私たちは話し合いを続けました。

●「運営交付金の削減額<給与削減により生じるお金」の場合でも
「お金は余らない」

運営交付金が減額されるのか否か、
まだ決まってもいない状態で打ち出されている給与削減なのですが、
例年10月という運営交付金についての決定が出される際、
そのとき万が一給与削減を強行していたとして、
「運営交付金の削減額<給与削減により生じるお金」であれば、
差額を給与として返還せよと組合は要求しました。

これに対して大学側は、「説明はする」と言うのみ。
大学「運営費交付金を自分の取り分だーというように既得権益と思って
もらったら困ります。」
組合「何を言うか。それは、労働者の賃金だ。
私たちの労働の代価だ。
取り上げて、余った賃金をどうするか、
口を出すのは当然だ。」


●「交渉」とは名ばかり。大学側は労働契約の変更に「組合の合意は
必要ない」と強弁。

私たちは、大学側があくまでも
「社会適合の原則」等にこだわって減額を実施するというのであれば
減額率を適正な数字に設定するべきであるとして、
大学の予算における運営交付金の割合が36%であることから、
9.77、7.77、4.77にそれぞれ0.36をかけた割合の減額率まで下げること
を提案しました。

労使対等であるはずの団体交渉の場で、
大学側がするべきは、組合の提案を受け止め、検討して妥協点を探る
ことです。
ところが大学側は、「給与のほとんどが運営交付金からまかなわれ
ている」との主張をくりかえすのみ、
ハナから「交渉」には応じようとせず、
最終的には労働契約の変更に組合の合意は必要ないと強弁しました。
「いくら言ったって最終的にはこちらの考え通りにするよ!」
と堂々と言い放っている相手に、何を「交渉」できるのでしょうか?

36協定(残業)は、労使対等に協議して、文言や数値を決定して、
労使が署名します。
役員会に持ち帰って、決定したりしません。
36協定で支払われる残業代も、運営費交付金から出ています。

なぜ、過半数代表者とは対等に協議して、労働組合とはしないのか。

これも、大阪大学の不当労働行為です。


●大学って何?阪大って何?

大学側は繰り返し繰り返し「公務員の給与規定に準ずる」
「社会情勢に適合する」ことを主張します。

実際、減額率も全くそのままの適用です。
しかし大学側が金科玉条根拠としている独立行政法人通則法、
大阪大学教職員給与規定には、
「公務員の給与規定に準ずる」「社会情勢に適合する」だけでなく、
「当該独立行政法人の業務の実績を考慮し」「大学の財務状況等を
勘案し」と明記してあります。

これについて大学側は、「大学の資金運営は病院の設備等の借入・返済
等があるため、
黒字に見えても赤字である」という主張をすることで、
「考慮」「勘案」をしていると言いたいようです。

これで納得できますか?

私たちが言っているのはそういうことではない。

大学には、教育研究機関として、官公庁とは異なるそれぞれ独自の特徴
がある。
たとえば専門性の高さであるとか、人的資源の比重が大きいとか、
いろいろあります。

それらを一つ一つ考慮して、
本当にこの減額率が妥当なのかということを真剣に検討ほしいと言って
いるのです。
ここをすっ飛ばしにして、ただ単に「公務員の給与規定に準ずる」こと
だけを目指すのであれば、
「大学って何?阪大って何?」と、その存在意義すらゆらいできてしま
います。

阪大は「22世紀に輝き続ける、世界トップ40の大学」を目指すのでは
なかったでしょうか?

自分の大学の存在意義すら堂々と主張できない阪大を認めてくれる
ところが、世界のどこにあるでしょうか??


● 交渉の最後に岡本過半数代表は署名に託された思いを伝える。

阪大組合との交渉で1000人を越える署名について
尾山理事は重く受け止めるが、
署名をしていないたくさんの人がいることも考えないといけない、
ということを言ったと聞きました。

私たちの交渉で問い直すと、
さすがにバツが悪かったのか、ごまかしていましたが、
「無記名の署名者の思いをどう想像しろというのですか?」
と開き直る場面もありました。

岡本委員長は、次のように言いました。
60歳で定年を迎えた職員さんが、
再雇用をされ、事務補佐員として働き、交通費も出ない。
そんな先輩の姿を見ながらも、職員さんたちは懸命に働いている。
にもかかわらず、理不尽な賃金減額で、働きがいまで奪われている。
一方、華々しく箱ものやプロジェクトは打ち上げられている。
大学を支えて頑張る人たちが生き甲斐を感じられるような労務政策を
人事を専門とする人は、もっと考えないと、
将来の大阪大学が心配でならない。

このように
署名者の思いを交渉の場で伝えても、
「再雇用を望む人もあれば、そうでない人もいる」とさらりとかわし、
それどころか、署名に寄せられた労働者の言葉を言語事実として伝えて
いるにもかかわらず、

「ここは組合との交渉の場なので、過半数代表者ではないでしょ。
署名は関係ないでしょ。」
と話をさえぎる若い職員。
彼を制して、岡本委員長は最後まで粘り強く話しましたが、
その職員も、労働者なのです。

尾山理事は、
「彼の言葉は大学の言葉です」とその職員を指差して言いました。
職務上、賃金減額の素案を作る仕事をしたかもしれない。
しかし、彼は、労働者です。
理事は、運営費交付金から高額な給与をもらっておいて、
若い職員に自分と同じ権限があるかのように言うのは
おかしいでしょ。
それが、搾取ってもんでしょ!


酒井裕美・今岡良子

(3)交渉を終えて再度団体交渉を申し入れました。

私たちは、今日から減額率に関する交渉が始まるものだと理解して
いましたが、大学はまったく聞く耳をもちませんでした。

持参した紙を読み上げて今日の交渉の項目ではない「憲法違反」など
を理由にあげて交渉を打ち切りました。

交渉は、始まったばかりです。
私たちは、学長宛の申し入れをすぐにまとめました。
添付ファイルをご覧ください。

その返事が、いつものように部長名で帰って来ました。
20120702.pdf添付ファイルをご覧ください。



(4)「私たちは植民地経験を今まさにしている!」

植民地時代、西欧列強は「保護領」にしたアフリカの国々において、
そこに生きる人々には全く権利を与えずに、人頭税、小屋税を課し、
強制労働に従事させた。中には反対意見を述べる現地住民もいたが、
そういう人々は逮捕され拷問にかけられた。

反対意見が大きくなった時、植民地行政府はとりあえず「話し合い」の
場を設けることもあったが、そこでは現地住民の処遇に関して「交渉」の
余地はなく、「お前らに意見があるなら意見を言え、聞いてやる、でも
決定事項はこれだ」という態度で植民地官吏が押さえつけた。

イギリスをはじめとして、間接統治をした西欧列強の場合、自国の
経費負担をできるだけ抑えるため、植民地行政府に派遣された自国人
(つまり白人)は少数しかおらず、下っ端の植民地官吏の多くは黒人
だった。独立闘争の際、これら植民地行政府側についていた黒人が、
独立を目指す「同じ」黒人たちに非道な行いをしたのは、アフリカ各地で
見られたことである。

今、まさに、同じ職員の立場でありながら、他の大多数の教職員の
生活苦をものともせずに給与削減を断行しようとしている人事課の職員は、
ケニアで言えばホームガード、モザンビークで言えばレナモ、南アフリカで
言えばインフォーマントと呼ばれた人々と同じことをしていると言える。

私たちは今、はからずも植民地経験をしている。ある意味、あの時代の
黒人たちの苦難が実体験できたことは勉強になっている。しかし、21世紀
にもなって、未だにこんなことを繰り返しているようでは、人類としての
進歩が全くない。そのことを、「一応」最高学府と言われる大学に勤めて
いる者として恥ずかしいと思わないのか、それを総長に問いたい。

竹村敬子


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