今年度(2005年度)の賃金改定について

関連文書:
「平成17年度給与改定による職員給与規程改正にかかる意見について(依頼)」 [PDF](P) (学長の労働者過半数代表者宛文書,2005年11月17日,PDF)
「大阪外国語大学における給与改定について」 [PDF](P) (上記文書の付属資料,2005年11月17日,PDF)
2005年11月28日
国立大学法人大阪外国語大学長
是永 駿殿 
大阪外国語大学教職員組合執行委員長
佐々木 猛(印)
今年度(2005年度)の賃金改定について

 組合は、今年度の賃金改定についての団体交渉を3月9日に申し入れ、さらに9月15日、今年度の人事院勧告に連動した職員賃金の一方的な引き下げを行なわないことを、団体交渉事項として申し入れた。この申し入れに対し11月14日、総務課長から「大阪外国語大学における給与改定について」の提示と説明がおこなわれた。組合は、今年度の賃金問題を協議する前提として、1.賃金改定は労使の交渉により決定するという原則の確認。2. 「大阪外国語大学における給与改定について」の提案は、不利益変更に当たる事案であるという確認。が必要であると主張し、持ち帰り回答することを求めた。11月22日大学は、「平成17年度における給与改定の実施についての考え方と方針」を、組合が提起した上記2点の確認事項への回答ならびに補足説明だとして提示した。
 大学の提案「大阪外国語大学における給与改定について」「平成17年度における給与改定の実施についての考え方と方針」(以下「提案」)は、就業規則による労働条件の一方的不利益変更の説明として不完全極まりないものであり、誠実交渉義務を果たしていないと、組合は考える。したがって、以下の確認事項と質問事項への回答を要請し、団体交渉事項である今年度の賃金改定について、大学に説明義務の履行を求めるものである。

1. 賃金改定についての基本の確認

 大学の「提案」は、あたかも国立大学法人には労働基準法が適用されず、国立大学法人の賃金改定に、人事院勧告が直接適用されると考えているとしか思えない文案である。国家公務員は、労働基本権を制限・剥奪され、使用者と労働組合が対等な関係で賃金などの労働条件を決定することができない。そのため、世間並みの労働条件が保障されるように民間準拠を趣旨とする人事院勧告が出される。労働基本権の制限・剥奪の代償措置が、人事院勧告制度である。
 今更言うまでもないことだが、国立大学法人の労働条件(賃金改定)は、使用者(大学)と労働組合が、対等平等な関係のなかで労働条件を決定するというものであり、使用者(大学)は、労働組合との団体交渉を通じて労働条件を決定するという憲法28条と労働法にもとづく法的義務を果たさなければならない。組合との誠実交渉義務を履行しないで、団体交渉を拒否し、就業規則・賃金規程の一方的な不利益変更を強行するならば、憲法と労働組合法で禁止されている団交拒否と団結否認の不当労働行為となる。念のため、厚生労働省通達基監発第0925001号「国立大学法人等に対する労働基準関係法令の適用について」(平成15年9月25日)を挙げ確認しておく。

 「国立大学法人等の職員については、労働基準法(昭和22年法律第49号)、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)、最低賃金法(昭和34年法律第137号)、じん肺法(昭和35年法律第30号)、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)、賃金の支払いの確保等に関する法律(昭和51年法律第34号)及び労働時間の短縮に関する臨時措置法(平成4年法律第90号)を含め労働基準関係法令が適用される。」

 また、独立行政法人通則法第63条3項は、労働組合法や労基法を無視してもよい規定と拡大解釈できない。通則法第63条3項は、「給与及び退職手当の支給の基準は、当該独立行政法人の業務の実績を考慮し、かつ、社会一般の情勢に適合したものとなるように定められなければならない。」と規定する。しかし、もし通則法第63条第3項に、労働条件決定のル-ルを創設する効力を与えようとするならば、労働組合法や労基法の適用を除外するという根拠規定をおかなければならないが、適用除外規定はない。
 したがって、通則法第63条3項の規定は、国立大学法人の賃金制度が社会一般の情勢に適合したものとなるように、国立大学法人に対し制度構築に努力することをもとめているにすぎない。
 仮にも人事院勧告を賃金改定の理由として挙げるなら、大阪外国語大学のホームページにもある「職員と国家公務員及び他の国立大学法人等との給与水準(年額)の比較指標」について説明してもらいたい。そこには外大の事務職員の対国家公務員ラスパイレス指数が91.1とあり、国家公務員の平均より大幅に低いことを示している。また、人事院の「平成17年度職種別民間給与実態調査」によれば、私立大学では教授(55.9才)722,338円、助教授(46.5才)581,085円、助手(36.6才)419,426円となっている。外大の場合、教授職の最高額でも588,200円であり、月収ベースで10万円以上低い水準といえる。こうした実態をふまえるなら、「国家公務員の給与水準」を考慮して大阪外国語大学職員の賃金を増額し、「社会一般の情勢に適合したもの」となるよう改善の努力を約束するのが理にかなっている。

確認事項:
①国立大学法人の労働条件(賃金改定)は、労使交渉を通じて決定するという原則を認めること。
②国家公務員との格差を認め、今後、賃金ならびに人事制度を改善する交渉に応じること。

2. 「平成17年度における人事院勧告に伴う給与改定」の必要性について

 運営費交付金制度は、国立大学法人それぞれの中期目標・中期計画にもとづいて、国が財政的助成を行う制度である。具体的には、第一期の2004年度の運営費交付金が基礎額として決定され、翌年度はその基礎額をもとに効率化係数をかけられて減額支給される。2004年度の運営費交付金が基礎額となって、2005年度交付金も、2006年度交付金も算定されるというのが原則である。もちろん、運営費交付金中の人件費総額決定において、人事院勧告を翌年度の運営費交付金決定に反映させるということはありうる。しかし、今年度の運営費交付金は確定していることから判断すると、今年度の人事院勧告を理由として、17年度途中において本学の労働条件を不利益に変更する法律的な根拠も運営費交付金上の必要性もない。

質問事項:
①「大阪外国語大学における給与改定」を実施した場合、今年度の人件費削減額はいくらになるのか。
②その金額が、本学の当該年度の財政のうえで、どのような影響をもつのか。
③その削減分はどのように使用する予定かを明らかにしてもらいたい。
④また、2006年3月末退職者の退職金減額分を、①とは別に明らかにしてもらいたい。

3. 就業規則による労働条件の一方的不利益変更について

 労基法九三条は、就業規則による労働条件の一方的不利益変更を認めていない。就 業規則に労働条件を引き上げる機能しか認めていないため、労基法が規定していない就業規則による労働条件の不利益変更問題は、裁判所の判断によることとなる。最高裁判例は、就業規則による労働条件の一方的不利益変更を「原則として許されない。しかし、例外として合理性がある場合に許される」としている。大学の「提案」では、「社会一般の情勢に適合した」適正な給与水準が要請されている、と給与改定の理由をあげ、「世間並み」に変更するのだから、今回の不利益変更には「合理性」があるという論旨となっている。しかし、最高裁判例で重要なことは、変更対象が賃金・退職金などの重要な権利と労働条件の場合は、「合理性」の判断には「高度の必要性」が求められるという判断枠組みが示されていることである。「高度の必要性」とは、不利益変更される内容が「社会一般の情勢」を反映するかどうかだけでなく、大阪外国語大学で、なぜ、賃金という重要な労働条件を不利益に変更する「必要性」があるのか、と いうことが明らかにされなければならない。

確認事項:
①「大阪外国語大学における給与改定について」の提案は、不利益変更に当たる事案であるということを確認すること。
②「高度の必要性」についての説明責任を果たし、交渉に必要な資料を迅速かつ十分に公開すること。
③とりわけ、昨年11月25日に申し入れた人件費の支出内容を含め、教員・職員の年齢構成に基づく賃金支給状況の資料を明らかにすること。

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初版: 2005.11.28 ; 最終更新: 2005.11.28
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